溺水事故の応急処置法。水難事故救助後の心肺蘇生とAEDの方法
[もくじ]
溺水(できすい)の応急処置について
水の中でおぼれてしまうと
どうしても口や鼻の中に水が入ってしまいます。
水が気管の方に入ってしまわないように
咳(せき)反射が起こるのですが
この状態が続くと
喉頭(こうとう)部分がけいれんを起こしてしまい
声門が閉じてしまいます。
声門が閉じてしまうと、
肺に空気が送れない状態になってしまいます。
脳に充分な酸素が送れなくなると
意識を失ってしまいます。
意識がなくなると
今度は
声門が開いて気管に水が入ってきます。
そして
この状態が長く続くと
心臓が停止してしまいます。
溺水した人を水から出した後に
まず行なうのは
意識状態やバイタルサイン(生命維持に必要な徴候)を
確認することです。
意識確認の方法。
① 声をかける
溺水した人の耳元で呼びかけます。「大丈夫ですか!」
徐々に呼びかけの声を大きくしていきます。
その人の名前が分かるのであれば、名前を呼びます。
② 肩を軽くたたく
鎖骨をたたくと
カラダに良く響くので反応が分かりやすくなります。
乳幼児の場合は足のウラを軽くたたきます。
これらの確認で意識の有無を調べます。
意識が無い状態になると
アゴや首、舌などに力が入らなくなるので
舌の根元が落ち込んだり、
液体や食物の塊がひっかかってしまい
喉の奥が塞がってしまいます。
そのままの状態を放置することになると
呼吸ができなくなるので
「気道確保」をしなければいけません。
バイタルサイン
バイタルサインとは
ヒトの生命にも関わる最も重要な情報の事を指します。
「血圧」「脈拍」「呼吸」「体温」
そして「意識」レベルを付け加えての5つ。
溺水事故の場合は
まず「意識」、
そして「呼吸」の確認を素早く行ないます。
周りに助けを求める
周りに協力を要請します。
「119番通報をお願いします!」
「AEDをお願いします!」
それぞれを別々に依頼します。
この時に
「メガネをかけた男性のあなた」とか
「赤い服を着た女性のあなた」などと
誰に依頼したか特徴と一緒に言ってあげると良いです。
呼吸がなければ胸骨圧迫
溺水事故の場合、呼吸の確認は
胸部と腹部の動きを観察して普段通りの呼吸があるか
をチェックします。
この呼吸の確認は10秒以内に判断します。
呼吸の確認ができない場合は
「心停止」と判断して
速やかに胸骨圧迫の心臓マッサージを行なっていきます。(心肺蘇生)
胸の真ん中(胸骨の下半分)を
手のひらで絶え間なく押し続けます。
胸骨圧迫は
1分間に100回以上のペースで押していきます。
押すチカラは垂直で
5センチは深く沈み込むように押し込んでいきます。
押した後は元に戻るぐらいにしっかりとチカラを抜きます。
これを30回行なっていきます。
気道確保と人工呼吸
次は「気道確保」と「人工呼吸」を行なっていきます。
意識がなくなると
舌根沈下が起こり気道がふさがります。
これを防ぐために、
アタマは後方へ曲げてアゴを挙げます。
額(ひたい)に手のひらを当てて
もう一方の手の中指と人差し指でアゴを持ち上げて
頭部を後ろに傾けます。
※ このとき、アゴを支える指が口腔底を圧迫させないことに注意します。
※ 頚椎症(首に怪我)がある場合は頭部の後屈は行なわない事。
人工呼吸
人工呼吸は
患者の鼻をつまんで
口を大きく囲うようにして1秒間かけて息を吹き込みます。
胸を見ながら息を吹き込んで
胸が上がってくる程度の量を目安に。
1秒間の吹き込みをして鼻から指を離して
吹き込んだ息を自然に出させます。
これを2回繰り返します。
※(唾液や血液による感染を防ぐため感染防止用呼気吹き込み用具やハンカチがあれば使用する)
AEDが到着するまで、
医師や救急隊が到着するまでは
胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を繰り返して行ないます。
質のよい胸骨圧迫を続けるために
近くに協力者がいれば、1〜2分目安ごとに交代して行ないます。
交代する時は胸骨圧迫の中断時間を最小限にとどめてください。
AEDが到着したら
AEDが到着したらAEDを持ってきてくれた人に
「AED」が使えるかどうかを聞きます。
AEDが使えるのであれば、
そのまま胸骨圧迫を続けていき、AEDを設定してもらいます。
AEDが使えないとなれば、
胸骨圧迫を交代してもらい、自分でAEDを設定していきます。
胸骨圧迫は絶え間なく続けなくてはいけません。
AEDの使い方
①電源を入れる
AEDのタイプによっては蓋を空けるだけで電源が入るものもあります。
電源スイッチを押して起動させます。
電源スイッチを入れると
音声ガイドが始まりますので
音声指示に従っていきます。
②「パッドを胸に装着してください」
「ランプが点滅しているソケットに
パッドのコネクターを接続してください」
傷病者の着ている衣服を脱がせますが
心肺蘇生は続けていきます。
傷病者の胸を確認して
胸が濡れている場合は拭き取ります。
貼り薬や塗り薬がある場合は
それを取り除きます。
もし医療器具がカラダに埋め込まれている場合は
その部分を避けて電極パッドを貼ります。
電極パッドのイラストを見て
貼付ける位置を確認してその通りに装着します。
イラストの通りに
ひとつは右胸の鎖骨の下に
もうひとつは左のわきの下5センチから8センチの位置に
心臓を挟み込むように電極パッドを貼ります。
電極パッドと肌の間には空気が入らないようにして密着させます。
次にコネクターを差し込みます。
(AEDにすでに差し込まれているタイプもあります)
「ランプが点滅しているソケットにパッドのコネクターを接続してください」
③「心電図を解析中です」
AEDが自動的に心電図を解析するので
その時は解析の妨げにならないように
傷病者のカラダに触れないようにします。
「心電図を解析中です。カラダに触れないでください」
という音声指示に従います。
④電気ショック
電気ショックが必要であれば
「ショックが必要です」
「充電中です」
「カラダから離れてください」
という音声指示が出されます。
AEDが電気ショックを起こさせるために充電を行ないます。
誤って感電してしまう恐れがあるので
必ず周囲の人に「離れてください!」と声をかけて離れたことを確認します。
ショックが必要でなければ
「ショックは不要です。一時中断中です」
という音声が発せられて
充電を行なわないので誤って電気ショックを与えてしまうことはありません。
電気ショックを行う場合
充電が完了すると
AEDはショックボタンの点滅とともに
電気ショックを行なうように音声指示を出します。
「ショックを実行します。オレンジボタンを押してください」
もう一度傷病者に誰も触れていないことを確認して
ショックボタンを押します。
「ショックが完了しました。一時中断中です」
という音声に続いて
「ただちに胸骨圧迫と人工呼吸をしてください」
とAEDから指示されるので
速やかに胸骨圧迫からの心肺蘇生を再開していきます。
ショックが不要でも
胸骨圧迫と人工呼吸は継続して行なっていきます。
ショックで除細動が成功した場合でも
再び心停止となってAEDが必要になる場合があります。
AEDは2分毎に心電図解析を行なっていくので
電極パッドは剥がさずに電源も入れたままにしておきます。
心肺蘇生を「中止してよい場合」とは
心肺蘇生とAEDを用いた除細動は
次の場合を除いて中止してはいけません。
・傷病者が嫌がって、動き出す、うめき声を出す。
・見るからに普段通りの呼吸が現れた時。
・医師、または救急隊に傷病者を引き継ぐことができる時。
・救助者に疲労や危険が迫り、心肺蘇生を続けることが困難になった時。
これらの事意外は、心肺蘇生を継続して行なうことが求められます。
助ける命を救うため
いざという時は勇気を持って実行してください。
AED補足
突然の心停止は、
心臓が細かく震え出す「心室細動」という不整脈によって生じることが多く
心臓を正常な動きに戻すためには
こういったAED(自動体外式除細動器)を使用した電気ショックが必要になるのです。
これを「除細動」といって
心停止後、できるだけ早く除細動を行なうことで救命率は高くなります。
AEDは機種によって若干の操作方法の違いがありますが
原則としてAEDの音声指示に従って操作していきます。
水に溺れるということ
プールや海での遊泳中の子供の溺水・水難事故や
老人の入浴中の事故など
日常生活でも溺水事故は起こりうるものなのです。
意外と入浴中の事故の方が多発しているケースがあります。
溺れるといっても
もがいて溺れる場合ではなく
静かに水に沈んでいくような状況もあります。
冷水に浸かることが迷走神経を刺激して
徐脈(じょみゃく)や心室細動など
重症の不整脈起こして失神することが原因でもあります。
また
耳管(じかん)に水が入ったり
平衡感覚に影響を与えている錐体部(すいたいぶ:脳底部にある)に
出血することで
平衡感覚を失って水に溺れてしまう可能性もあります。
プールや川遊びで浅瀬に飛び込んで溺れたような時には
頚椎損傷についても疑う必要があります。
心肺蘇生の処置の際には
濡れた衣服を脱がせて毛布などで保温しながら行なうことも大切です。
水に使っていて低体温状態にあることは
循環動態にとっては不利ですが
その反面、細胞の代謝は抑えられているので蘇生の可能性は高くなります。
あきらめずに心肺蘇生を続けることが大切なのです。
【参考動画】
大阪市北消防署 心肺蘇生法の方法
【救命ガイドラインPDF】
救命処置の手順(心肺蘇生とAEDの使用手順)
【救命処置の流れ】
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