フルマラソンを完走するには。知っておきたいエネルギーと水分
「東京マラソン」
「大阪マラソン」
「京都マラソン」
たくさんの◯◯マラソンが
増え始めた今日この頃。
ここ金沢でも「金沢マラソン」が
開催されるようになりました。
42.195キロという
フルマラソンでの長い距離を完走するには
いろいろなことを知っておかなくてはいけません。
自分のカラダのことを
ちゃんと理解しておけば
よく言われる「35キロの壁」を突破して
フルを完走することは
それほどムズカしくはないのかも知れません。
フルマラソンを攻略するために
カラダについてしっかり学んでおきましょう。
[もくじ]
フルマラソンを完走するには
「走る」ってことは
当然ながら、エネルギーを使いながら走ります。
カラダを動かすために必要不可欠なエネルギーは
どう使われているのか。
まずはここから見ていきましょう。
① 2つのエネルギー源。
ランニングだけではなく
ハードな運動や日常生活においても
エネルギーは使われています。
そのエネルギー源は、糖質と脂質の2種類。
これらが口から入り
消化器官で分解されて
肝臓を経由して血液にのり、
筋肉細胞に送られています。
消費されるエネルギーは
運動の強度によって
そのつど、割合が変化します。
強度が低ければ脂肪が優位に使われて
強度が高ければ高いほど糖質が優位に消費されています。
マラソンのような競技は
当然、脂肪を優先的に使った方が有利です。
糖質は、1gあたり4kcal。
脂肪は、1gあたり9kcal(体脂肪の場合は7kcal)
のエネルギーが賄えます。
このように
脂肪は低強度の長時間運動には
ゼッタイ的なパワーを与えてくれます。
さきほど述べた「35キロの壁」では
この脂肪がウマく使えなくなってしまうせいなのか?
その答えは
イエスでもあり、ノーでもあるのです。
② グリコーゲンがカギを握る?
口から摂取した糖質は
筋肉と肝臓に「グリコーゲン」というカタチで
プールされています。
血液中では「グルコース」というカタチでいます。
筋肉グリコーゲンは
筋肉運動のエネルギーとして利用され
肝臓グリコーゲンは
血糖値をキープさせるための予備の糖質として
蓄えられています。
糖質と脂質の2つのエネルギー源は
運動強度が最大時の60%程度
(一般人ならジョギングから適度なランニングレベルの運動)
を境に、脂質優位から糖質優位にシフトします。
このことからも
フルマラソン完走の攻略のカギは
脂質優位のギリギリの運動強度で走り続けること
になります。
しかし、
脂質を消費させるには
糖質が必要不可欠なのです。
筋肉細胞のミトコンドリアで
脂肪を代謝する時に
糖質の分解物「オキザロ酢酸」という物質が必要なのです。
筋肉グリコーゲンの量は
個人差はありますが
だいたい350〜500グラム程度。
これが枯渇するのが
ちょうど35キロ地点と言われています。
脂質の代謝でグリコーゲンが使えなくなることが
ペースダウンの大きな原因となっているのです。
③「筋肉脂肪」を使って走る?
マラソンのトップランナーは
みんなスレンダーです。
ぽっちゃりとかぼてっとした体型の人は
まず見ないです。
脂肪なんて蓄えられていないのに
何であの速さでいつもフルマラソンを走り切ってしまうのか?
めちゃくちゃ疑問です。
でもそこにはちゃんとした理由があるのです。
個人差があって
だいたいの目安ですが
体重50キロであれば
フルマラソンで使うエネルギーは2100kcal。
(体重×距離というエネルギー消費量の概算法のひとつ)
筋肉グリコーゲンの量が350グラムであれば
1400キロカロリーしか使うことができません。
まったくのエネルギー不足になっちゃいます。
そこで
体内の「他の部分」から
脂質の助けを借りることになるのです。
それは、
皮下脂肪と内臓脂肪に蓄えられている脂質から。
しかし最近では
筋肉の中にも
脂肪が霜降り上に存在していること
が明らかになってきました。
筋肉脂肪(IMTG:筋肉内トリグリセリド)
が多いのは
やはりメタボ体型の人ですが
その対極にあるスリムな長距離ランナーにも
筋肉脂肪があるというのです。
熟練なランナーになれば
その筋肉脂肪が多いのです。
筋肉の中に脂肪があるので
手っ取り早くエネルギーに変換されるという。
ニンゲンの驚くべき適応力に驚かされます。
④ カーボ(グリコーゲン)ローディングの効果は?
カーボローディング(グリコーゲンローディング)
という食事調整法があります。
ご存知の方も多いと思いますが
レース前に
より多くグリコーゲンを体内に貯蔵しておこう
という方法で
レース1週間前の前半に高強度なトレーニングと
低糖質食(10%)の摂取を行い、
後半になってくると逆に高糖質食(90%)を摂り、
徐々にトレーニング強度を下げていくもの。
しかしこれはデメリットもあって
疲労の蓄積や体調不良を招きやすいのです。
現在では
このカーボローディングの「改良型」が一般的で
レース1週間前の前半は糖質50%の食事。
だんだんと練習量を落としていき
後半は
糖質70%の高糖質食に切り替える
シンプルなもの。
この改良型でも
充分なレベルの効果が得られて
筋肉内に備蓄されるグリコーゲンの量は
通常の1.5倍にもなると言われています。
これはフルマラソン完走のために
やるべき食事法だと思います。
⑤ 最初から「飛ばし過ぎ」で起こる症状
小学生の頃には
長距離走では必ずと言っていい程いた
最初に全力で走ってしまい、
あとでどんどん抜かれる調子のいい子供。笑
また
箱根駅伝などやそれほど長くない距離の走りでよく見る、
突如フラフラ倒れ込んでしまう選手達。
スピードレースでありがちな「ギブアップ」ですが
この場合の症状は
フルマラソンとは違うものなのです。
これらの
スピードランニングで倒れてしまう主な原因は
「水分不足」なのです。
脱水で血液の量が減ってしまい
心臓の1回拍動するごとに
押し出される血液量が減少されます。
そうなると
カラダは心拍数を増やして
血液を全身に回そうとしてしまいます。
こうなってしまうと
「有酸素→無酸素」の運動となってしまい
乳酸などの代謝物がたまって
筋肉の収縮が妨げられてしまいます。
糖質が一気に使われて
筋肉が動かなくなってしまうのです。
こう配が大きなレースでも
下り坂で筋肉が損傷してしまうケースもあります。
フルマラソンでは
自分のペースで走れるので
このような心配は無いのですが
飛ばし過ぎてしまうと起こりうることでもあります。
気をつけましょう。
⑥ 水分補給はやっぱり大事なコト
筋肉のグリコーゲンの確保ともに
フルマラソン完走のために大切なのは
「水分補給」
42キロのフルマラソンでは
およそ3ℓの水分が
体外へ出て行きます。
人によっては4ℓとなり
タイムが5時間、6時間となっていけば
さらに発汗量は増えてしまいます。
脱水によるランニングパフォーマンスの低下。
体重の約2%の水分が失われると
口が渇く感覚になります。
でもこれはすでに
軽い脱水症状
なのです。
それ以前に
水分補給をしなくてはいけません。
また
汗とともに流れ出るのは水分だけではなく
ナトリウムやカリウムなどの栄養素も失われています。
走り始めて1時間以上になれば
糖質とミネラルの補給を行なわなければいけません。
スポーツドリンクですね。
エイドステーションでは必ず
水分補給+糖質+ミネラルを。
もしそこで摂れなかったら、
自販機で飲料を購入しましょう。
小銭は携帯しておく方が良いです。
水分補給のタイミングとしては
【レースの前半】では
積極的に水分を摂って
脱水症状を防ぐことを主眼に。
【レース後半】では
胃の内容量を抑えながら、
水よりもむしろエネルギーを補給することを主眼に。
本格的に水分補給を行なっていくのは
走り始めてから30分後。
代謝や内分泌の変化は
これ以降に起こってくるためです。
30分以降は
こまめに少量ずつを定期的に。
が基本的な考えとなります。
⑦ もう走れない!って思ったら
「やべ、もう限界かも…」
って感じたら、
無理して走れ!
カラダをぶっ壊してでもガンバレ!
今までの努力を台無しにするな!
って考えたらダメです。
これは後々、
カラダにダメージを残してしまい
後悔すること必須です。
痛め方が大きければ大きいほど
回復に時間とお金がかかります。
筋肉や腱を痛めることは
ランナーにとってはイタすぎるコト。
あともう少しなのに…。
思い切って無理しないことも
立派なスポーツ選手です。
もし
急激なパフォーマンスの低下を感じたなら
とりあえず足を止めて
糖質を含んだ水分を補給します。
ゆっくりゆっくり歩きながら
回復を待ってみましょう。
もしイケそうと思ったのなら
ジョギングペースでゴールを目指しましょう。
回復が感じなければ
棄権する勇気も持つことを辞さずに。
⑧ フルマラソンは甘くない
フルマラソンを完走するのは
そんなにカンタンなことではないのです。
しっかりと「レース計画」を練って
エネルギーの枯渇や
水分補給に備えて万全の準備を。
これらを怠って
フルマラソンを完走できる
とは考えてはいけないのです。
ハーフマラソンとは違う、
フルマラソンの醍醐味
をしっかり味わうためにも
練習の時からのケアも重要になってきます。
日頃からちゃんとケアをしていれば
筋肉がどんな状態に今あるのか
を把握できるようになります。
自分の状態を分かっていないと
フルマラソンという42.195キロもの長い距離を
走り切るのはムズカシイのです。
またこの動画のように
ダイエットのためにフルマラソンを走る
ってのは良くありません。↓↓
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